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マラソン
http://www.marathon-movie.com/


韓国で大ヒットした映画である本作は
自閉症という障害をもった主人公とその周りの人間の関係を
絶妙に描いた名作です。

大まかなストーリーの展開は、
導入→出会い→確執→成長→結末なのですが
各部分で出てきた小さな場面やせりふが上手く後半に反映されており
その見事な手法は感動を呼びます。
もっとも、現実の話をモチーフにしたわりには
反映のされ方がキレイすぎるきらいもありますが・・・。

少しだけ内容を掘り下げて書きたいと思います。
無垢な心で人々を惹きつけてくれる主人公は
20歳にも拘わらず5歳の知能しかありません。
その不出来さをいとおしく感じて束縛ともいえる愛情を注ぐ母親がいる一方で
彼らを疎ましく感じる人間もいます。

話の展開の中で、持ち前の純粋さや努力によって
障害者とは思えない才能や成績を見せつけた主人公のチョンウォンは
コーチや弟といった面子から理解され応援される人間となります。
王道といえばそうなのですが、
幸せな結末ってやっぱり見ていて気持ちがいいですよね。

ただし、冷静に見てみると考えさせられる点も結構隠されています。
裏主題のひとつは「トラウマ」という言葉と
日本で言う「三つ子の魂百まで」の境界でしょう。

小さい頃に与えられた環境は人間に大きく作用します。
ただし、人間は成長していくものなので
その過程で幼年期のステータスは変化します。
トラウマも解消されることもあれば
逆に増幅されることもありうるのです。

ですが、仮に5歳から成長が止まったままならいったいどうなるのでしょうか?
エンディングに向かう映画後半の主人公の行動は
一見すると成長や自立の芽生えのように見えます。

しかし、5歳の知能を持った彼は物言わぬ存在。
そのひたむきな姿を、勝手に感動的だと判断し我々は涙したりするわけですが
実際のところ、結論は出ないままです。

また実話を元に構成された話であることも素直に感動できない要素となりました。
海を隔てた日本でも感動を呼ぶであろう本作ですが、
果たして実在する主人公のモチーフとなった少年は
そのことを理解できているのでしょうか?
オレには、何も知らない5歳児のひたむきさを勝手に映像化して
勝手に泣いている気がするのです。

そういうバックグラウンドを考えると少しだけ複雑な気持ちになりますが
この作品が試写会に来ていた多くの観客をボロボロなかせていたのは紛れもない事実。
心あらわれる2時間を過ごしたい方はぜひ見てみてください。

 

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